ドラッグストアで風邪薬や鎮痛剤を買ったレシートを「医療費控除に使えるかも」と保管している人は多いはずです。市販薬(OTC医薬品)の購入費には、通常の医療費控除とは別に「セルフメディケーション税制」という制度があり、どちらか一方しか使えません。どちらが得かは医療費の総額と市販薬の購入額の組み合わせで変わるので、申告の前に両方を計算して比べる必要があります。
セルフメディケーション税制と医療費控除、どっちが得かは計算方法の違いで決まる
出典:国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき」、No.1132「セルフメディケーション税制」(2026年10月8日確認)
まず押さえる:医療費控除の「10万円」には例外がある
医療費控除の計算式は「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円」です。ただし国税庁は、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの金額を差し引くとしています。控除額の上限は200万円です。
読み取れること:「10万円に届かないから医療費控除は無理」と決めつけられるのは、総所得金額等が200万円以上の人だけです。所得が200万円未満なら基準はもっと低くなります。たとえば総所得金額等が150万円なら、差し引くのは7万5,000円です。自分がどちらの計算になるかを先に確かめてください。
セルフメディケーション税制の対象と条件
対象は、医療用医薬品から転換された「スイッチOTC医薬品」と、それと同等の効能を持つその他の一般用医薬品です。国税庁によると令和8年4月1日現在でスイッチOTC医薬品が100成分、その他の一般用医薬品が42成分。成分は追加されることがあるので、具体的な品目は厚生労働省のホームページで確認します。適用を受けるには健康診断や予防接種など「健康の保持増進及び疾病の予防への取組」を行っていることが条件ですが、その健診や予防接種そのものの費用は控除の対象に含まれません。
もともと医師の処方が必要だった医療用医薬品のうち、薬局やドラッグストアで買える一般用医薬品に転換(スイッチ)されたものです。解熱鎮痛剤や胃腸薬の一部などが該当します。
選択制で、あとから切り替えることはできない
セルフメディケーション税制を選んだ場合は通常の医療費控除を受けられず、通常の医療費控除を選んだ場合はセルフメディケーション税制を受けられません。さらに、確定申告でいずれかを選んだあとに、更正の請求や修正申告でもう一方へ切り替えることもできません。提出前に計算を終えてから選ぶ必要があります。
どちらが得か、2つのケースで比べる
判断に使うのは相場や金利のような予測できない数字ではなく、手元のレシートで分かる「今年の医療費の総額」と「市販薬の購入額」です。総所得金額等が200万円以上の人を想定して比べます。
| ケース | 医療費控除で計算 | セルフメディケーション税制で計算 |
|---|---|---|
| 通院が多く総医療費20万円(市販薬2万円を含む) | 20万円-10万円=10万円 | 2万円-1.2万円=0.8万円 |
| 通院は少なく総医療費6万円、市販薬5万円 | 10万円未満のため0円 | 5万円-1.2万円=3.8万円 |
出典:国税庁の計算方法をもとに算出(総所得金額等200万円以上を想定)
1つ目は通院が多いので医療費控除が有利、2つ目は医療費控除では10万円に届かず0円になるのに対し、セルフメディケーション税制なら3.8万円の控除が受けられます。通院が少なく市販薬で済ませている人ほど、セルフメディケーション税制が効くという関係です。
☐ 今年買った対象市販薬の購入額から1.2万円を引く(上限8.8万円)
☐ 2つを比べて、控除額が大きいほうを選んで申告する
レシートの見分け方と、申告に必要な書類
対象の市販薬かどうかは、レシートに対象商品である旨の表示があればそこで判別できます。一部の対象医薬品にはパッケージに識別マークが付いています。どちらの表示もない場合は、厚生労働省のホームページの対象品目リストで確認します。
申告のときは確定申告書に「セルフメディケーション税制の明細書」を添付します。対象医薬品の領収書と、健康の保持増進・疾病予防の取組を証明する書類(予防接種済証、市区町村の検診結果通知表、職場の定期健康診断結果通知表、特定健康診査の領収書など)は、提出は不要でも自宅で5年間保管する義務があります。レシートだけでなく、健診や予防接種の証明も一緒に残しておく必要があります。
現行制度は令和8年12月31日までの購入が対象
国税庁は対象を「令和4年1月1日から令和8年12月31日までに購入したもの」としています。つまり2026年(令和8年)は現行制度の最終年にあたり、今年中に買った分が、来年の確定申告で使える最後の機会になる可能性があります。延長されるかどうかは今後の税制改正で決まるため、現時点で延長が決まっているわけではありません。レシートをまとめている人は、今年のうちに対象品目かどうかと購入額を確認しておくと確実です。
まとめ
2.医療費控除の「10万円」は総所得金額等が200万円未満ならその5%に下がります。所得によって有利・不利が変わります。
3.現行制度の対象は令和8年12月31日までの購入。延長は決まっていないので、今年のうちに確認しておくのが確実です。
※制度の内容や対象品目は改正される場合があります。実際の控除額や申告方法は、国税庁の案内または税務署・税理士にご確認ください。


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