在職老齢年金の基準額が65万円に|2026年4月、51万円からこう変わった

在職老齢年金の基準額が65万円に|2026年4月、51万円からこう変わった 家計・節約

60歳を過ぎても厚生年金に加入しながら働く人の年金が、給与と年金の合計額に応じて減らされる「在職老齢年金」。この支給停止の基準額が2026年4月から変わりました。「51万円を超えたら年金が減る」と覚えていた人は、同じ働き方でも受け取れる年金が増えている可能性があります。

基準額は2026年4月から65万円になった

65万円
新しい支給停止調整額
令和8年4月から適用
51万円
改正前の基準額
令和8年3月まで
老齢厚生年金のみ
調整の対象
老齢基礎年金は調整されない

出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」(2026年10月8日確認)

読み取れること:この65万円は固定された数字ではありません。日本年金機構は支給停止調整額について「毎年度、賃金の変動に応じて改定されます」と明記しています。来年度も65万円とは限らないので、年度が変わったら確認し直してください。

「62万円」と書かれた情報を見かけるのはなぜか

この制度を調べると「62万円」という数字が出てくることがあります。厚生労働省の説明によると、2025年6月に改正法が成立した時点の基準額は62万円で、そこから毎年度の賃金変動による改定を経て、2026年4月からは65万円になっています。古い解説記事が62万円のままになっていることがあるので、年月とセットで確認してください。

読み取れること:同じ制度でも、改正法の成立時点の額と、実際に適用される年度の額は違います。「いつ時点の数字か」が書かれていない解説は、そのまま使わないほうが確実です。

なぜ引き上げられたのか

厚生労働省は見直しの背景を「平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者が増えており、また人材確保・技能継承等の観点から、高齢者の活躍を求める世の中のニーズも高まっています」と説明しています。制度の目的としては「保険料負担に応じた本来の年金額を受給しやすくする」ことが挙げられています。基準額が上がるほど、年金を減らされずに働ける収入の範囲が広がります。

出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」(2026年10月8日確認)

そもそも在職老齢年金とは

60歳以降も厚生年金保険に加入しながら働き、老齢厚生年金を受け取っている人が対象です。毎月の賃金(総報酬月額相当額)と年金(基本月額)の合計が基準額を超えると、超えた分の半分だけ年金が支給停止されます。重要なのは、調整されるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は基準額を超えても全額支給される点です。「働くと年金が全部止まる」わけではありません。パートやアルバイトでも厚生年金に加入する働き方なら対象になり、厚生年金に加入しない働き方であれば、そもそもこの調整を受けません。

用語メモ:賃金と年金の合計額とは
「賃金」は毎月の給与に年間ボーナスを月割りにした分を加えた金額(総報酬月額相当額)、「年金」は老齢厚生年金の月額(基本月額)です。この2つを合計した額を基準額と比べます。

計算式と、停止される額

日本年金機構は支給される年金額の計算式を「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」としています。つまり停止されるのは、基準額を超えた分の半分です。賃金と年金の合計額ごとに見ると次のようになります。

賃金+年金の合計額 65万円を超えた分 停止される年金(月額)
60万円 超えていない 0円(全額支給)
70万円 5万円 2.5万円
80万円 15万円 7.5万円
90万円 25万円 12.5万円

出典:日本年金機構の計算式をもとに算出

旧基準(51万円)と比べてどれだけ変わったか

同じ「賃金+年金の合計70万円」で、旧基準と新基準を並べると差がはっきりします。

旧基準(51万円) 新基準(65万円)
基準額を超えた分 19万円 5万円
停止される年金(月額) 9.5万円 2.5万円
差 — 月7万円、年間84万円

出典:日本年金機構の基準額と計算式をもとに算出

このケースのまま5年間働き続けると、単純計算で420万円分、旧基準より多く年金を受け取れることになります。実際の賃金や年金額は毎年変わりますが、無理に賃金を基準額以下に抑える必要性は小さくなったという方向は変わりません。

自分が基準額を超えるか確認する

基準額を超えるかどうかは相場では決まらず、自分の働き方で決まります。確認するのは2つだけです。

65万円を超えるか確認する2点
☐ 毎月の給与とボーナスの月割り分を合計した金額(総報酬月額相当額)はいくらか
☐ 受け取っている(または受け取る予定の)老齢厚生年金の月額はいくらか(ねんきん定期便や年金事務所で確認できる)
☐ 年度が変わったら、基準額が改定されていないかを確認したか

総報酬月額相当額は、標準報酬月額に、直近1年間のボーナス(標準賞与額)の合計を12で割った額を足したものです。自分で計算しづらい場合は年金事務所や「ねんきんネット」で見込み額を相談できます。この2つの合計が65万円以下なら年金は全額支給され、超える場合も超えた分の半分だけが停止されるため、基準額をわずかに超える程度なら、働いて得られる収入のほうが停止額より大きくなるのが通常です。

用語メモ:「106万円の壁」とは別の制度
パート・アルバイトの社会保険加入の基準になる「106万円の壁」と、在職老齢年金の65万円は別の制度です。106万円の壁は社会保険に加入するかどうかの基準、在職老齢年金は年金を受け取りながら働く人の年金の調整の基準です。両方に関係する人は、それぞれ別に確認する必要があります。

まとめ

1.在職老齢年金の支給停止調整額は令和8年4月から51万円→65万円に引き上げられました。
2.調整されるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は全額支給されます。
3.この額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。年度が変わったら確認し直してください。

※制度の内容や金額は改定される場合があります。自分の年金額や停止額の見込みは、ねんきん定期便・ねんきんネットまたは年金事務所でご確認ください。

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