会社都合の退職や雇い止めで会社を離れ、健康保険を国民健康保険に切り替えたら、思っていたより保険料が高くて驚いた。わりとよく聞く話です。前年の所得で計算されるので、収入が止まった年に、前年の給与を基準にした請求が来てしまうからです。ただし「非自発的な失業」に当てはまる場合は、前年の給与所得を30/100とみなして計算し直してもらえる制度がある。しかも多くの自治体では自動では適用されず、申請しないかぎり通常額のまま決まります。対象になる離職理由コード、軽減の内容と期間、任意継続と比べるときの順番を見ていきます。
出典:渋谷区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」、松山市「非自発的失業者に対する軽減措置」、全国健康保険協会「任意継続」(いずれも2026年10月確認)。
国民健康保険料の軽減を受けられる「非自発的失業者」とは
軽減の対象になるかどうかは、本人が会社都合だと思っているかではなく、離職時に交付される雇用保険受給資格者証に印字された離職理由コードで決まる。自治体の案内は、いずれも同じコードを挙げています。
| 区分 | 対象になる離職理由コード | あてはまる例 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 11・12・21・22・31・32 | 解雇、事業継続が困難になった解雇、期間満了(予告あり)、事業主からの働きかけ、事業所移転 |
| 特定理由離職者 | 23・33・34 | 期間満了(予告なし・3年未満)、正当な理由のある自己都合、被保険者期間が12か月未満の場合 |
一方、コード40(正当な理由のない自己都合退職)とコード25(定年・移籍出向)は対象外とされている。「自己都合だから無理だろう」と自己判断して申請しない人がいるが、雇い止めはコード23、やむを得ない事情のある退職はコード33・34に分類されることがあるため、書類の数字を見てから判断したい。コードは、受給資格者証そのものに印字されています。
保険料はどう軽減されるのか
対象になると、保険料の算定に使う前年の給与所得を実際の30/100とみなして計算し直す。注意したいのは、軽減されるのが給与所得だけという点だ。事業所得や年金収入など、給与以外の所得は対象に入りません。世帯にそれらがあると、下がり幅は小さくなります。
| 前年の給与所得 | 本来の算定基礎 | 軽減後の算定基礎 |
|---|---|---|
| 200万円 | 200万円 | 60万円 |
| 300万円 | 300万円 | 90万円 |
| 400万円 | 400万円 | 120万円 |
読み取れること:国民健康保険料は所得割・均等割・平等割などの組み合わせで決まるので、上の「軽減後の算定基礎」に保険料率を掛けた額が、そのまま最終の保険料になるわけではありません。ただし所得に連動する所得割は大きく下がる。軽減の内容と期間は全国共通のルールだが、保険料率は自治体ごとに違うため、下がる金額そのものは窓口か保険料決定通知書で確認することになる(自治体によって名称が「国民健康保険税」の場合もある)。
軽減される期間はいつまでか
適用されるのは離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末まで。たとえば2026年10月に離職した場合、2026年10月分から2028年3月分までが対象になる。期間中に再就職して勤務先の健康保険に加入すれば軽減は役目を終え、国民健康保険を続けている限りは期間いっぱい軽減が続く。離職した月によって効く長さが変わる制度で、年度の後半に離職した人のほうが、結果的に長く適用されます。
申請しないと軽減は適用されない
ここが最も見落とされやすい。軽減は保険料の決定通知に自動で反映されるものではなく、多くの自治体で本人による届出(特例対象被保険者等該当届)が必要とされている。国民健康保険の加入手続きのときに自分から言わないと、案内されないまま通常額で決まってしまうこともあります。すでに通常額で決まっていても、届出をすれば期間内の分は計算し直してもらえるのが一般的です。気づいた時点で窓口に相談してみてください。
前者は倒産・解雇など会社都合性の強い離職者、後者は雇い止めのように本人に継続の意思があったのに離職に至った人を指す。雇用保険の給付日数や給付制限の扱いは異なるが、国民健康保険料の軽減については<strong>どちらも同じように対象になる</strong>。
任意継続と比べるなら、軽減後の金額で比べる
退職後の健康保険には、会社の健康保険を続ける任意継続という選択肢もある。全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内では、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あり、退職日の翌日から20日以内に手続きすれば、最長2年間加入できる。保険料は在職中は会社と半分ずつだったものを全額自己負担することになるので、だいたい在職時に給与から引かれていた額の2倍になります。協会けんぽでは、退職時の標準報酬月額が32万円を超える場合、32万円で計算した額が上限です。
ここで順番を間違えやすい。非自発的失業者の軽減は国民健康保険だけの制度で、任意継続には使えません。そのため「任意継続のほうが安いはず」という一般論で決めてしまうと、軽減後なら国民健康保険のほうが安かったという結果になりうる。任意継続の申請期限は20日しかないので、先に市区町村の窓口で軽減後の保険料を試算してもらい、その金額と任意継続の保険料を並べて比べるのが正しい順番になる。
申請に必要なもの
自治体によって細かいところは違いますが、共通して挙げられているのは次のものです。
・雇用保険受給資格者証(離職理由コードが記載されたもの)または雇用保険受給資格通知
・マイナンバーが確認できる書類
・本人確認ができる公的な身分証明書
国民健康保険の加入手続きと同時に申請できる自治体が多い。郵送やオンライン(スマート申請)を受け付けている自治体もあるため、窓口へ行く前に自分の市区町村の案内を見ておくと一度で済む。
判断軸:自分の手元の書類で決められる3点
保険料率の将来の見通しのような予測できないものではなく、次の3点はすでに手元の情報で判断できる。
・雇用保険受給資格者証の離職理由コードは、対象の番号に入っているか
・退職日の翌日から20日以内か(任意継続を選択肢に残せる期限内か)
・世帯に給与所得以外の所得(事業所得・年金等)がどれくらいあるか(軽減の対象外になる部分)
☐ 離職理由コードが11・12・21・22・23・31・32・33・34のいずれかである
☐ 国民健康保険の加入手続きと軽減の届出を、まだ済ませていない分がある
☐ 退職日の翌日から20日以内かどうかを確認した(任意継続と比べる場合)
☐ 市区町村の国民健康保険担当窓口の場所・受付時間と、郵送やオンライン申請の可否を調べた
まとめ
2.軽減の期間は離職日の翌日が属する月から翌年度末まで。ただし適用は自動ではなく届出が必要で、申請しなければ通常額で決定されます。
3.任意継続にこの軽減は使えません。申請期限は20日しかないので、先に軽減後の金額を試算してから任意継続と比べるのが順番です。
出典:渋谷区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減」、松山市「非自発的失業者に対する軽減措置(特例対象被保険者等に係る届出書)」、全国健康保険協会「任意継続」「任意継続の保険料について」(いずれも2026年10月確認)。制度の細かいところや必要書類は自治体によって違うので、手続きの前に自分の市区町村の案内を見ておいてください。
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