厚生労働省が2026年9月8日に公表した毎月勤労統計調査(令和8年7月分結果速報)で、実質賃金が前年同月比2.4%増となり、7カ月連続のプラスとなりました。報道では「賃金が物価に勝った」という見出しが目立ちますが、7月は賞与が支給される月であり、数字の中身を分けて見ないと家計の実感とズレが生じます。この記事では速報値の内訳を確認したうえで、家計管理の観点でどこを見るべきかを整理します。
2026年7月の実質賃金は2.4%増、7カ月連続プラス
実質賃金指数(現金給与総額・持家の帰属家賃を除く総合で実質化)は117.6で、前年同月比2.4%増でした。プラスは7カ月連続です。名目の現金給与総額は1人あたり平均436,401円で前年同月比4.7%増、一方で実質化に使われた消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の上昇率は2.2%でした。名目の伸びが物価上昇を上回ったことが、実質賃金がプラスになった直接の要因です。
なお、消費者物価指数の「総合」で実質化した場合の実質賃金は120.1で前年同月比2.6%増と、さらに高い数値になります。実質賃金は何で割り戻すかによって結果が変わる指標であり、報道で目にする数字がどちらなのかを確認する必要があります。
この数値は速報値です。毎月勤労統計調査は後日公表される確報値で改訂されることがあるため、現時点では暫定的な数字として受け取るのが無難です。
内訳を分けて見ると、賞与の比重が大きい
7月分の賃金の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 金額 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 現金給与総額 | 436,401円 | 4.7%増 |
| きまって支給する給与 | 301,582円 | 4.1%増 |
| うち所定内給与 | 280,797円 | 4.1%増 |
| 特別に支払われた給与 | 134,819円 | 6.3%増 |
注目したいのは、特別に支払われた給与(賞与など)が134,819円と、現金給与総額の約3割を占めている点です。7月は夏季賞与の支給が集中する月なので、この構成は例年どおりではあります。しかし裏を返せば、7月の数字をそのまま「毎月の手取りがこれだけ増えている」と読むことはできません。
毎月の生活費に直接効いてくるのは、賞与を含まない所定内給与のほうです。こちらは280,797円で前年同月比4.1%増。伸び率としては十分に高く、賞与の一時的な増加だけでなく基本給の底上げも進んでいる可能性を示しています。実質賃金のプラスが賞与頼みなのかどうかは、賞与の影響が小さい月の統計を見ることで、より確かめやすくなります。
物価指数と家計の体感がズレる理由
実質賃金の計算に使われた物価上昇率は2.2%です。ただしこれは持家の帰属家賃を除く総合、つまり生活に関わるあらゆる品目を平均した数字です。家計が値上がりを強く感じる食料品などの個別品目は、これより高い上昇率になっていることがあります。
実際、当サイトで以前扱った統計でも、総合の物価上昇率と食料の上昇率には大きな開きがありました。食費の比重が高い世帯ほど、平均値で見た「実質賃金プラス」と日々の実感との差は大きくなりやすいと考えられます。実質賃金がプラスでも生活が楽になった感覚がないとしたら、それは感覚が間違っているわけではなく、平均の指標と自分の支出構成が違うためである可能性があります。
年度ベースではまだマイナスが続いていた
月次で7カ月連続プラスという流れは前向きな材料ですが、より長い期間で見ると景色が変わります。厚生労働省の集計では、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の実質賃金は前年度比0.5%減で、4年度連続のマイナスでした。
つまり直近まで、賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状態が数年にわたって続いていたことになります。今回の7カ月連続プラスは、その長いマイナス期間からの回復途上にある動きと捉えるほうが実態に近いでしょう。過去に目減りした購買力を取り戻しきったかどうかは、この数字だけでは判断できません。
その他の指標もあわせて確認
- 総実労働時間:141.6時間(前年比0.2%減)。労働時間はわずかに減少しており、賃金の伸びが労働時間の増加によるものではないことを示しています。
- パートタイム労働者の時給:1,460円(前年比5.7%増)。伸び率は高めです。
- パートタイム労働者比率:31.28%(前年差0.04ポイント)。パート比率が上がると平均給与額は下がる方向に働くため、比率が横ばいであることは平均額の伸びを読むうえで前提として押さえておきたい点です。
家計として何をすればよいか
実質賃金がプラスに転じている局面で家計管理として検討したいのは、次の3点です。
- 賞与と毎月収入を分けて管理する。7月の統計が示すとおり、賞与は金額のインパクトが大きい一方で変動しやすい収入です。賞与を前提に固定費(住居費・通信費・サブスクなど)を引き上げると、賞与が減った年に家計が硬直化します。固定費は毎月の所定内給与の範囲で組み立てるのが安全です。
- 増えた分の使い道を先に決める。収入が増えたときに支出が自動的に膨らむのを避けるには、昇給分や賞与の配分(貯蓄・投資・消費)をあらかじめ決めておく方法が有効とされています。
- 自分の物価上昇率で確認する。平均の2.2%ではなく、自分の家計の支出項目がどれだけ上がったかを見るほうが実態に近い判断ができます。食費・光熱費・通信費の年間比較をしてみると、平均値との差が見えてきます。
まとめ
2026年7月の実質賃金は前年同月比2.4%増で7カ月連続のプラスとなり、名目賃金の伸びが物価上昇を上回りました。所定内給与も4.1%増と伸びており、基本給の底上げが進んでいる可能性があります。一方で7月は賞与の比重が大きい月であること、年度ベースでは令和7年度まで4年度連続のマイナスが続いていたことを踏まえると、この流れが定着したと判断するのはまだ早い段階と考えられます。今後の月次統計と確報値をあわせて確認していきたいところです。
※本記事の数値は厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8年7月分結果速報」(2026年9月8日公表)に基づく速報値です。確報値で改訂される場合があります。


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