※本記事は制度の解説です。広告は含みません。
「銀行が潰れても1,000万円までは戻る、というのは聞いたことがある。じゃあNISAをやっている証券会社が潰れたら、1,000万円を超えている分は消えるのだろうか」。SNSでも同じ趣旨の書き込みを見かけます。これは預金保険の考え方を、そのまま証券会社に当てはめてしまった誤解です。
出典:金融庁「投資者保護基金制度の概要」(金融庁 投資者保護)
証券会社には、顧客の財産を分けて保管する義務があります
金融庁の資料では、これを分別保管と呼んでいます。分別保管は投資者保護の柱となるもので、金融商品取引法により全証券会社に義務付けられていると説明されています。
| 預かるもの | 保管のしかた |
|---|---|
| 金銭 | 顧客ごとに算出し、その合計金額を信託銀行に信託。一週間に一度以上チェック |
| 有価証券 | 証券保管振替機構で、証券会社自身の財産と顧客から預かった財産が判別できるように管理 |
出典:金融庁「投資者保護基金制度の概要」
だから破綻しても、原則は返ってきます
金融庁の資料には、証券会社の分別保管を前提とすれば、仮にその証券会社が破綻しても、顧客から預かった財産は顧客に返還されることになる、と書かれています。
つまり通常の破綻であれば、1,000万円という上限はそもそも出てきません。ここが預金保険との決定的な違いです。
1,000万円が出てくるのは、返還できないときです
では投資者保護基金はいつ使われるのか。金融庁の説明では、万が一破綻時に何らかの事故が発生するなどにより、証券会社が顧客から預かった財産を返還できない場合に、一人当たり1,000万円まで補償を行うとされています。
| 銀行の預金保険 | 投資者保護基金 | |
|---|---|---|
| 対象 | 預金とその利息 | 証券会社が顧客から預かった財産 |
| 発動する場面 | 銀行が破綻したとき | 破綻時に事故などで財産を返還できないとき |
| 上限 | 1,000万円 | 一人当たり1,000万円 |
| 使われる頻度 | 預金の保護はこの制度が前提 | 分別保管が働いていれば出番がありません |
出典:金融庁「投資者保護基金制度の概要」および預金保険制度の一般的な説明
値下がりによる損失は補償されません
混同しやすいのでもうひとつ。金融庁の資料には、投資者保護基金は有価証券の値下がり等により発生した顧客の損失を補償するものではない、と明記されています。
証券会社が破綻するかどうかと、持っている株式や投資信託の値段が下がるかどうかは、まったく別の話です。投資の元本割れは、どの制度でも守られません。
NISA口座だけ扱いが違う、という記載は見当たりません
ここは正直に書きます。金融庁の投資者保護のページにも、NISAの特設サイトにも、NISA口座が特定口座や一般口座と違う扱いになるという記載は確認できませんでした。分別保管は証券会社に課された義務で、口座の種類ごとに分けて説明されてはいません。
口座を分けるかどうかの判断軸
「1,000万円を超えたから証券会社を分けたほうがいい」という考え方は、ここまで見てきたとおり前提が違っています。分ける理由にするなら、別の観点のほうが実際的です。
- 使っている証券会社が分別保管の対象で、投資者保護基金に加入しているか。これは確認すれば答えが出ます。
- 取扱商品や手数料、アプリの使い勝手に不満があるか。分ける動機はたいていこちらです。
- 管理できる口座数か。増やすほど、確定申告や資産の把握は面倒になります。
いずれも相場の予想ではなく、自分が答えを持っている項目です。
銀行で投資信託を買っている場合も同じ考え方です
投資信託や株式は預金ではないので、銀行で買っていても預金保険の対象ではありません。この点は、証券会社で買った場合と変わりません。
いずれにしても、分別して管理されているかどうかが要点で、1,000万円という数字が最初に出てくる話ではありません。
- 証券会社には分別保管の義務があり、金融庁は破綻しても顧客から預かった財産は返還されることになると説明しています。
- 投資者保護基金の一人当たり1,000万円は、事故などで財産を返還できない場合の補償の上限です。預金保険とは出てくる場面が違います。
- 値下がりによる損失はどちらの制度でも補償されません。口座を分ける判断は、破綻リスクではなく使い勝手で考えるほうが現実的です。


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