60歳の誕生日を迎えて「ねんきん定期便」を開き、納付済月数が480月に届いていないことに気づく。そこから調べはじめる人は少なくありません。国民年金は20歳から60歳までの40年間(480月)納めると満額の老齢基礎年金を受け取れる仕組みです。学生時代の未納や免除がそのまま残っていれば、65歳からの年金は満額より少なくなります。その穴を埋めるために用意されているのが、60歳以降も自分の意思で保険料を納め続けられる任意加入制度だ。日本年金機構の案内をもとに、対象になる人の条件と、5年間納めると年金がいくら増えて、何年受け取れば元が取れるのかを計算してみます。
出典:日本年金機構「国民年金の保険料はいくらですか」「令和8年4月分からの年金額等について」(2026年10月確認)。満額は、昭和31年4月1日以前生まれの場合は月額70,408円です。
国民年金に任意加入できるのは、60歳以上65歳未満のどんな人か
日本年金機構の案内では、任意加入の対象になるのは次の4つをすべて満たす人とされている。
1. 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
2. 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない人
3. 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の人
4. 厚生年金保険、共済組合等に加入していない人
4番目の条件があるので、60歳以降も会社員として厚生年金に加入し続ける予定の人は、そもそも任意加入の対象になりません。また、65歳になっても年金の受給資格期間(10年=120月)を満たせない人には、65歳以上70歳未満まで加入できる特例が用意されている。ただしこれは昭和40年4月1日以前に生まれた人に限られ、受給資格期間を満たすまでしか加入できない。年金額を増やす目的では使えないので、ここは気をつけてください。
追納は、過去に免除や猶予を受けた期間の保険料をあとから納める仕組みで、承認を受けた月の前10年以内の期間に限られます。一方の任意加入は、60歳以降に新しく保険料を納めて納付月数そのものを積み増す制度。どちらを使えるかは、手元の記録に未納があるのか免除があるのかで変わる。
5年間任意加入すると、年金はいくら増えるのか
老齢基礎年金の額は、納付月数に比例します。令和8年度の満額は年額847,296円(月額70,608円)で、これが480月納めた場合の金額なので、1月あたりの増え方は847,296円÷480月=約1,765円(年額)となる。この単価をあてはめると、こうなります。
| 加入期間 | 支払う保険料の総額 | 増える年金額(年額) |
|---|---|---|
| 1年(12月) | 215,040円 | 約21,200円 |
| 3年(36月) | 645,120円 | 約63,500円 |
| 5年(60月) | 1,075,200円 | 約105,900円 |
出典:日本年金機構の公表額(保険料月額17,920円・満額年額847,296円)から筆者が単純計算。税や社会保険料の影響は含めていません。
読み取れること:5年間(60月)納めた場合、支払う保険料は総額1,075,200円で、増える年金は年額で約105,900円。年金の増加は一度増えたら生涯にわたって毎年続く。支払いは5年で終わるのに、受け取りは終わらない。この非対称がこの制度の性質です。
何年年金をもらえば元が取れるか
保険料の総額1,075,200円を、増える年金額(年額約105,900円)で割ると約10.2年。65歳から受け取り始めるなら、75歳2か月ごろまで生きていれば支払った保険料を上回る計算になる。この年数は、加入期間を1年にしても5年にしても変わりません。保険料と年金額がどちらも月数に比例するので、割合としては同じになるからです。
ただしこれは税・社会保険料を考慮しない単純計算であり、受け取る年金が増えれば所得も増えるため、手取りベースでは回収までの年数はこれより長くなりうる。
任意加入と一緒に検討できる「付加保険料」
日本年金機構は、第1号被保険者と任意加入被保険者が、定額保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納められると案内しています。付加年金の額は200円×付加保険料納付月数(年額)。5年間(60月)納めた場合、追加の保険料は400円×60月=24,000円で、増える年金は年額200円×60月=12,000円。2年受け取れば払った分を上回る計算で、回収の速さは任意加入本体より大きい。なお、国民年金基金に加入している人は付加保険料を納められません。なお付加年金は定額で、物価スライドによる増額・減額がない(日本年金機構)。本体の老齢基礎年金が毎年度改定されるのとは扱いが違う点は、付加年金はいくら増える?月400円で年200円ずつ|国民年金と違い物価では増えないで詳しく書いている。
判断軸:寿命の予測ではなく、手元の情報で決める
何歳まで生きるかは、誰にも分かりません。だから、自分がすでに答えを持っている次の3点で考えるほうが現実的です。
・納付済月数は、あと何月で480月に届くか(ねんきん定期便で分かる)
・60歳以降、家計から月17,920円を無理なく出し続けられるか
・60歳以降も厚生年金に加入して働く予定があるか(あれば対象外になる)
特にあと1〜2年で480月に届く人は、支払う保険料の総額が小さいのに年金の増加は生涯続くため、同じ回収年数でも家計への負担が軽い。逆に不足が長い人は、月17,920円を何年払い続けられるか、という家計の問題として考えてみてください。
申込みの手続き
申込先は住んでいる市区役所・町村役場の国民年金担当窓口、または最寄りの年金事務所。日本年金機構は必要なものとして、基礎年金番号が分かるもの(またはマイナンバーカード)と、口座情報が分かる通帳やキャッシュカード等および金融機関への届出印を挙げている。保険料の納付方法は口座振替が原則とされているので、手ぶらで行くと手続きが終わらないことがあります。
☐ 老齢基礎年金の繰上げ支給をまだ受けていない
☐ 60歳以降、厚生年金や共済組合に加入する予定がない
☐ 月17,920円(令和8年度)を家計から無理なく出せる
☐ 国民年金基金に加入していない(付加保険料も使いたい場合)
まとめ
2.5年間(60月)納めると年金は年額で約105,900円増え、元が取れるのは約10.2年。65歳受給開始なら75歳2か月ごろが分岐点です。
3.任意加入被保険者は月400円の付加保険料も納められる。こちらは2年で元が取れる計算で、回収は本体より速いです。
出典:日本年金機構「国民年金の任意加入制度」「国民年金の保険料はいくらですか」「令和8年4月分からの年金額等について」「付加年金」(いずれも2026年10月確認)。金額は年度ごとに見直されるため、手続きの際は最新額を窓口で確認したい。
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